The long waiting

If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.

『心理学の名著30』,06カバッドジン『マインドフルネスを始めたいあなたへ』(一九九四)―自分らしく生きるための思考

 前回の『オプティミストはなぜ成功するのか』につづいて、充実した人生を送るための心理学ということだと思う。この研究もうつ病治療との歴史の中で捉えることもできる。またしても前向き本はうさんくさいと思ってたけど世の中のセラピストの方たちのことを信じないといけないなあとすごく思った。今回のマインドフルネスはそういう意味ですごくとっつきやすそうだし、実践するのには向いていそうだ。

 

  • 1.重要な概念
    • ①マインドフルネス
    • ②ボディスキャン
  • 2.学説史上の位置づけ
    • ①第三世代の心理学

  

1.重要な概念

①マインドフルネス

 マインドフルネスとは、特別な注意の払い方、つまり、一瞬一瞬の気づきの状態のことである。その状態においては人は何も判断することなく、心に寄せ来る異なる感覚・思考・知覚を受容している。p.55「自分を深く知り世界と調和するために」

 このマインドフルネスという言葉ははパーリ語sati(漢訳では「念」)に由来する新造語だ。マインドフルネスは太古の仏教者の実践であり、世界や自分自身との調和と共に生きることに関係している。この言葉は自分の身体に対して隅々まで意識を行き渡らせる、心配りをするという意味で、それを行うことがストレス低減に結びつくという主張だ。過去や未来ではなく、今の心を充実させるのがマインドフルネスなのである。

 

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『心理学の名著30』,05セリグマン『オプティミストはなぜ成功するか』(一九九〇)―無力感の研究から始まる楽観主義

  「学習性無力感」という言葉は聞いたことがあったし、結構なるほどなーと聞いた当時は思ったものだったが、うつ病の行動モデル(?)だとか、逆にその研究者の関心がポジティブ心理学へと繋がるということは初めて知った。ぼくの関心は、最近だと、カウンセリングで無力感や孤独感を癒す方法だとか、人をカウンセリングにどうつなげるか、職場のメンタルヘルス向上だとか拡散しつつあるけど、いろんな心理学の存在を知られることは、自分のやりたいこととをはっきりさせる上でとても役立ちそうだ。

 

  • 1.重要な概念
    • ①学習性無力感
  •  2.学説史上の位置づけ
  • 3.やりたいと思ってたこと

  

1.重要な概念

①学習性無力感

 心理学の立場からすると、この菅家さんはおそらく学習性無力感の状態だったと考えられる。何をやってもダメだ、という絶望感・無力感を身につけてしまったのである。いくら「やってない」と本当のことを言ってもとりあってもらえない。それどころか暴行を受けたりしかねない(実際に取調べで暴行があったかどうかは藪の中)。「本当のことを言っていい」と言われたので「やってません」と言ったら、それも否定される。こうしたプロセスを繰り返す中で菅家さんは、世の中に対する絶望感や無力感を学習したのだろう。ここで学習とは勉強とは少し意味が異なり、経験的に理解する、という意味である。p.47「無力感を学習するとは?」

 なぜ冤罪事件で虚偽自白をしてしまうかをこの概念で説明する例え話。*1端的に言うと、自分に事態打開能力がないことを学んでしまうということらしい。実験では電撃を与えられても自分でとめられない犬は、痛みを受けていくうちにショックから逃れることすらしなくなるという(合図の「音」と「電気ショック」と「逃げても無駄」という3つの関係を学んだ)。うつ病の無力感モデル形成の根拠となった。

 

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ぼくはアラサー男性で、好きな作品はごはんをおいしそうに描いてくれるはなしだ。

 三十路を迎えて気がついた。時代小説とか、ショートショートとか、ガリレオシリーズとかではない。ごはんがおいしそうなはなしが好きだ。昔から物語が好きでいろんなお話にふれてきた。絵本や紙芝居、テレビアニメ、マンガ、小説、映画、ゲーム、さらには歴史書、ノンフィクション等など、人生の様々な段階で常に何がしかの物語の世界に憧れていた。

 

 親元を離れて大学生になってからは特に読書に費やす時間が増えたと思う。社交的でもないので積極的に友達をつくることもできず、テレビを見ないなんだか知的なことをしてる学生にみられたいという自意識にまみれていたぼくの時間の過ごし方として読書はぴったりだった。ちなみに、「高校出たてのぼくがが考える大人っぽいマンガ」は読書に入るということにしてた。

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『心理学の名著30』,04ノーマン『誰のためのデザイン?』(一九八八)―アフォーダンスの応用

 今日はアップルやヒューレット・パッカードで活躍した認知心理学者によるデザインの本を取り上げる部分だ。この人はギブソンという人がつくりあげたアフォーダンスというの使い方を変えてすこし可能性を広げた人として紹介されている(「アフォーダンスという考えを確立したのはギブソンであり、ノーマンはアフォーダンスという概念を人工物と使用社の問題に転用したのである。」p.42「デザインは記号の配置である」)。

 特にゲーム産業なんかの世界だと重要になる概念であるが、疲れて眠いし、あんまり興味もないのでさくっと抜書をまとめて終えることにする。スヤァ

 

  

1.重要な概念

①二人のアフォーダンスの違い

 ただし、ノーマンのアフォーダンスは「ヒトAがモノBから☓☓☓できるという情報を読み取り実行する関係」のことを指しており、それはギブソンアフォーダンスとは少し違っている。ギブソンはヒトとモノの関係をダイレクトにつなぐ直接知覚の立場にたっているので、「ヒトとモノとの物理的な行為の関係性」こそがアフォーダンスということになる。情報などという中間項は不要なのである。p.40「デザインは記号の配置である」

 

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『心理学の名著30』,03スキナー『自由と尊厳を超えて』(一九七一)―新たな行動主義

 今回の著者は心理学での行動主義的な研究をしたある有名な方らしい。行動主義は昔講義で聞いた時はピンとこなかった。なにしろ文学が大好きで人の気持ちのゆらぎが気になってたから、「外部からの刺激で反応(行動)を説明する」という考え方が全然理解できなかった。今回は要約しながらそんなことを思い出しました。

 

  • 1.重要な概念
    • ①レスポンデント行動とオペラント行動
    • ②死人テスト
    • ③随伴性
  • 2.学説史上の位置づけ
    • ①行動主義を発展させる
    • ②行動療法
  • 3.よくわからないところ

 

1.重要な概念

①レスポンデント行動とオペラント行動

 動物の一種である人の行動には二種類ある。レスポンデント行動とオペラント行動である。そう言われても、多くの人には全くチンプンカンプンであろう。前者は簡単に言うと反射。膝の下を叩くと足がピンと伸びる。これが膝蓋腱反射として知られる反射である。後者は反射以外の行動で、自発的に行う行動。

  自発的行動の特徴の一つに、褒められた行動を繰り返し行うことができる、というものがある。p.30「行動を分類する」

  スキナーはこの分類をつくった心理学者だ。後者は良い結果が起きたら同じことを繰り返すことができるというのが特徴だ。この分類は罰よりも報酬で社会を良くしようという彼の考えと密接に結びついている。

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『心理学の名著30』,02ルリヤ『偉大な記憶力の物語』(一九六八)―記憶力が良ければ幸せか

 まだブログを始めたばっかりで、機能的なところがまったくわかってない笑 ちょっとずつでも慣れていけると嬉しい。次に扱うのは一九六八年原著刊行の『偉大な記憶力の物語』。『名著30』は各章ごとに紹介する本を発行年代順に並べてるので一気に飛んだことになる。

 本書の紹介はジェームズの紹介*1よりずっと読みやすい。素人でも聞いたことがある言葉も出てくるし、伝記っぽい研究だからだ。記憶の学説は結構直感的にも納得しやすい!

 

  • 1.記憶の学説
    •  ①忘れること:長期記憶と短期記憶
    •   ②思い出すこと:再生と再任
    •  ③語り方:命題記憶と意味記憶
    •  ④他に扱った記憶
  • 2.輪切りをつなげて見えるもの
    •  ①実験研究の限界
    •   ②直観像と共感覚

 

1.記憶の学説

 ①忘れること:長期記憶と短期記憶

 そして復習することで、短期記憶から長期記憶と呼ばれる記憶になり記憶が定着するとされている。つまり、古典的な理論では、記憶を長期記憶と短期記憶に分類する。p.24「記憶の分類」

 この人の研究は忘却曲線として今でも知られてるらしい。さらに短期記憶では人の記憶はせいぜい「5~9」までしか一度に覚えられないという研究もある。

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『心理学の名著30』,01ジェームズ『心理学について』(一八九九)―近代心理学の土台となる思想

 ちょっとづつ進めていきたい。今日からは第一章認知・行動領域ー「ヒト」としての心理学を頭からメモしていく。もうちょっとコンパクトに手早くまとめられるといいな。

  

  • 1.学説史上の位置づけ
    • ①自然科学としての心理学
    • ②ヴントとジェームズー心理学の父
  • 2.ジェ―ムズにとっての心理学とは
    • ①構造ではなく意識の流れ
  • 3.重要な概念
    • ①主格と目的格の私 
    • ②哲学者の二分法

 

1.学説史上の位置づけ

①自然科学としての心理学

 ジェームズは心理学を「意識についての学問である」とする、当時における最新の定義に賛同を表し、かつ、意識を自然科学的な側面から扱うとしている。それ以前の心理学が心を魂のような本質として考えていたのに対し、近代心理学では魂ではなく心という概念を用い、その「機能」がどのようなものであるかを捉えようとしたのである。p.16「意識は不断に流れている」

 それ以前の心理学っていうのがどういうものを考えてるんだろう。フロイトなのかなって思ったけど、フロイトは『名著30』のなかに含まれていて一九一七年が原著出版の年みたい。謎だ。

 

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