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The long waiting

If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.

『心理学の名著30』,05セリグマン『オプティミストはなぜ成功するか』(一九九〇)―無力感の研究から始まる楽観主義

  「学習性無力感」という言葉は聞いたことがあったし、結構なるほどなーと聞いた当時は思ったものだったが、うつ病の行動モデル(?)だとか、逆にその研究者の関心がポジティブ心理学へと繋がるということは初めて知った。ぼくの関心は、最近だと、カウンセリングで無力感や孤独感を癒す方法だとか、人をカウンセリングにどうつなげるか、職場のメンタルヘルス向上だとか拡散しつつあるけど、いろんな心理学の存在を知られることは、自分のやりたいこととをはっきりさせる上でとても役立ちそうだ。

 

  

1.重要な概念

①学習性無力感

 心理学の立場からすると、この菅家さんはおそらく学習性無力感の状態だったと考えられる。何をやってもダメだ、という絶望感・無力感を身につけてしまったのである。いくら「やってない」と本当のことを言ってもとりあってもらえない。それどころか暴行を受けたりしかねない(実際に取調べで暴行があったかどうかは藪の中)。「本当のことを言っていい」と言われたので「やってません」と言ったら、それも否定される。こうしたプロセスを繰り返す中で菅家さんは、世の中に対する絶望感や無力感を学習したのだろう。ここで学習とは勉強とは少し意味が異なり、経験的に理解する、という意味である。p.47「無力感を学習するとは?」

 なぜ冤罪事件で虚偽自白をしてしまうかをこの概念で説明する例え話。*1端的に言うと、自分に事態打開能力がないことを学んでしまうということらしい。実験では電撃を与えられても自分でとめられない犬は、痛みを受けていくうちにショックから逃れることすらしなくなるという(合図の「音」と「電気ショック」と「逃げても無駄」という3つの関係を学んだ)。うつ病の無力感モデル形成の根拠となった。

 

 2.学説史上の位置づけ

①行動主義と認知主義の間の研究

 このセリグマンの考え方と実験結果は当時の行動心理学に大きなショックを与えた。「やらないこと」を学ぶことが可能か、ということが議論の的になったのである。反論も受けたが、それに対する実験も実行することで「無力感を学習する」ということが認められるようになってきた。心理学史的に言えば、行動主義から認知主義へ移行する時期の研究としてセリグマンの研究を位置づけることが可能である。p.49「無力感を学習するとは?」

  人間は犬ほど単純ではなく、言葉という記号を使って自分はまだ行けると思えたりする。このような考え方は行動主義(「スキナーの考えは、心という構成概念を括弧に入れても、様々なことが記述できることを示したものである。」*2)と折り合いが悪く、行動主義とは異なる認知主義の心理学への移行の重要な役割を担わされる。セリグマンの考えは、フロイトの鬱は自分に対する怒りなのだという説明よりも遥かに有効で治療的対処の見通しを持つことが可能となった。彼の研究は行動療法・認知行動療法への道筋をつけた。

 

ポジティブ心理学(肯定的になる心理学)

 つまり、心理学は常に自己革新をしておりセリグマンはその立役者の一人である。ちなみに、ポジティブ心理学の先駆者はマズロー(22)である。現在の主唱者たちには、フロー体験(究極の集中状態であることに完全に没入している状態のこと)で有名なチクセントミハイなどがいる。人生の肯定的な面をとりあげるポジティブ心理学は今後ますます盛んになっていくだろう。p.53「社会からも必要とされるポジティブ心理学

  セリグマンの研究は無力感とは逆の肯定感の方へ展開していく。彼は物事を悲観的に捉えるかどうかは、その原因をどう説明するかが重要だと考えた。そして、物事の説明には「内的―外的」、「永続的ー一時的」、「普遍的ー特殊的」の隠れた次元があり、理由付けの次元はその後の気分に影響することもわかった。悲観的で抑うつを引き起こす逆の説明であれば楽観的になれるということだ。

 

3.やりたいと思ってたこと

 やりたいことを考えてる時に自分が心理学に期待していたイメージは、どうも「病んでる人を正常の範囲に戻すことを手伝う」というものだったようだ。変な自己啓発!のとは距離をおいたところで心理学を道具として使っていく感じ。だから、一見真逆のネガティブとポジティブを同じ枠組みで説明できるし、その枠の中にはうつ病も入るんだ!というのは結構衝撃だった。謙虚に学びます、はい。

 

 

 

オプティミストはなぜ成功するか [新装版] (フェニックスシリーズ)

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