The long waiting

If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.

『心理学の名著30』,10ビネ、シモン『知能の発達と評価』(一九〇五)教育のための適切な検査

 ここからは「ヒト」の心理学から「ひと」の心理学、つまり、発達領域の心理学を扱っていく*1。第二章知能検査をつくったアルフレッド・ビネの本。なんとなくIQの高い低いは気になるところで、やっぱり高いほうが嬉しかったりはする。もともとは行政が遅滞児判定をするためにつくったテストということで、それなら学校で学年一斉に受けさせられたのはが納得がいく。でも、今はへぼい結果が出るのがもう怖くてうけなおせないなあ。最近、この遅滞児に重なるところに興味を持てているのでこの本の存在を読めたのはけっこう嬉しい。

 

 

1.重要な概念

①知能検査

 そうした中、ビネは(シモンの協力を得て)それまでの知能検査と違って、総合的判断を重視する知能検査を作成した(一九〇五)。また、知的レベルの基準として子どもの年齢を使用することを思いついた。つまり、平均的な三歳児が行えることは「三歳児レベル」、平均的な四歳児が行えることは、「四歳児レベル」というように基準を作った。つまり、何かができるとかできないという細かな判断をするのではなく、全体としてある子どもが何歳児レベルにあるのかを理解できるような仕組みをつくったのである。p.93「総合的判断を重視する知能検査」

 こういう発想の転換はほんとうにうまいなあと思う。相対的に捉えようなんて考えが出てくるなんてすごいじゃないか。ここでビネは知能を注意力、理解力、判断力、推理の相対として捉え、そのための精緻なテストを考えた。ビネ以前に知的水準を推し量るためには子どもではなく親との面談などによっていたことも考えると、とても大きな進歩だった。

 2.心理学史上の位置づけ

①ビネ以前

 アタマの良さをとらえる試みは一八七九年に心理学が成立した前も後も、様々な形で行われていた。たとえば、シュプルハイムが創始した骨相学はアタマの形を捉えることでアタマの良い人が分かると主張した。キャテルという心理学者はメンタルテストという検査キットを考えた。心理学という学範(ディシプリン)が成立したことの大きなメリットは、実証主義の精神が持ち込まれたことにある。そして、実際に試みたあとに、それがうまくいったかどうかを検証することが可能になった。骨相学もメンタルテストも失敗であった。簡単にいえばピントがずれていたのである。pp.92-93「当時のフランスの状況」

 これらの考え方は、遅滞児のその原因を、知的障害的な原因、本人の努力不足、あるいはその中間的な環境によるものなど正しく原因を理解したうえでの効果的な対処にはつながらなかった。

②意図せぬ展開

 ただし、ビネの開発した知能検査は、丁寧に子どもを見てその実態に応じた教育を行うという彼本来の意図とは違う形で発展していくことになる。

・知能検査の結果を知能指数という数値で表したこと。

・軍隊で成人に使用することになり集団式知能検査が開発されたこと

 これがビネの知能検査を変質させた最も大きな二つである。この結果、低IQ者に対して移民排除が行われたり、強制断種手術が行われたこともあった。こうしたことはビネの意図とは間逆である。p.95「誤用される知能検査」

 

 これは確かにわかる。本ではビネ流のテストを「凝視 燃えているマッチを目の前で動かしたとき、それを目で追えるか」などと例示している。ぼくがうけたペーパーテストとはぜんぜんちがう。

  読み終わってみると、たしかに知能も発達領域の心理学の領域だと整理できる。けっこうこれまでの本とは様変わりしそうだけど、これは成長と発達の心理学なんだと意識しながら読むといままでのいろんな研究者についてのイメージも覆りそう。

 

知能の発達と評価―知能検査の誕生 (1982年)

知能の発達と評価―知能検査の誕生 (1982年)