The long waiting

If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.

"患者"の視点から読む、認められたい私たちが認め合う社会へ。―熊代亨『認められたい』

 かんたんな言葉でこのおれ/わたしの「認められたさ」を説明してくれて一気に読めた。とてもよかった。心の形がちょっとかわり、これからさらに変わり始めていく予感がする。

 

p-shirokuma.hatenadiary.com

 

 認められたい気持ちが自分も強くてコントロールしきれていないという思いはあったので、ここはぜひにとAmazonでぽちりました。おれがおれが、わたしはわたしは、という思いに振り回されている皆さんにすごくおすすめしたい。

 

 この本は『認められたい』という気持ちはどんなもか、その気持ちを満たし続けるために「苦しいあなたはどうすればいいか」を教えてくれる本だ。さらにはあなたの幸せの先に、あなたも人を幸せにできてお互いに認め合える社会が待っているかもしれないという構成となっている。

 

 認められたいとは他人との間での関係性の欲求だ。おおまかには承認欲求と所属欲求(自分が心寄せるグループに望ましいことになったら気持ちがみたされる)にわけられる。昔はとにかく会社に貢献することで所属欲求を満たす人がたくさんいたように、所属欲求が社会的に強かったけれども、今では個人化の趨勢の下で承認欲求が優勢となってる。

 

 この承認欲求は一度満たしてもまたすぐ満たしたくなる。例えば、かまってちゃんはいったんかまっても、まだまだずっとかまってほしい。また、承認欲求を満たされている方が成長に繋がりやすいが、満たすのが下手な人(承認欲求のレベルが低い人)は内面的につらい思いをしがちだ。

 

 下手な人は承認欲求が強くて自分のことばかり考えていたり、そもそも認められないといけないとおもっていたりするところが特徴的である。年齢に応じた長所やコミュ力がある人は承認欲求を満たしやすく、他人とうまく関われる承認欲求を満たすのがうまい高い普通の人がいる。

 

 著者はわたしだけ!という承認欲求の一人勝ちは実質的に難しいと説いている。所属欲求をうまく満たせず、承認欲求だけを求めて生きていく孤独さは避けたほうが好ましいのだ。幸せになるためには要求水準の高い認められたい(承認欲求と所属欲求)を追いかけるのではなく、人並みに認められて満足できるようになることが大切なのである。

 

 そしてそのためにどうしたらいいのかということを「自己愛」と「適度な欲求不満」、「コミュ力」をキーワードとして、シンプルに、かつ、説明的に展開してくれる。他人との関係をコミュ力を身につけてどれだけ適度な距離感をとりながら長く続けていくか、レベル上げはこの関係の中で進んでいくのだ。

 

 このあたりの理論的な説明と方法は本書を手にとって噛みしめてほしい。目次で言うところの第5章コミュニケーション能力を育てるための7つの基礎、第6章人間関係の距離感の部分です。

 目次:認められたい/熊代 亨 - 紙の本:honto本の通販ストア

 

 自分自身にひきつけて考えてみる。ぼくは心理療法を受けている。無力感と孤独感に耐えられなくなってカウンセラーに電話をした。この本で言う承認欲求と所属欲求を満たすのが下手な人だろう。おれがおれが認められたい人は、認められる瞬間は気持ちよくても、認められていない長い時間はつらく認めて欲しがらざるをえないのだと思う。華やかな生活を見せびらかす人(さざるをえない人)は本当は居心地悪く生きているのかもしれない。

 

 面接の時間の中でとにかく自分についてひたすら話し続けるのを求められ、「適度な欲求不満」を何度も味わってきたと思う(面接の中では「諦める」、「折り合いを付ける」、「落とし所にする」という表現を好んで使う。)。あの瞬間の心が変わる感覚はすごく不思議だ。

 

 「認められたい」という気持ちは前からすごく強い。今も強い。そして、不思議な感覚をあじわいながら、心理療法の先にどんなものが待っていて自分その変化した後どうなってしまうんだろうという思いは前からあったし、全然予想がつかなかった。なにしろ、面接前と後では価値観が結構変わって周囲が違った景色に見える。すごく力強い文学作品に触れる前後の感覚の差に似てる。

 

 心理療法を受け始めてもう半年以上たつが、どうやって半径数メートルの人たちと関わるのがいいかという価値観、すこしずつ自分から身の回りの景色が最近は特に変わってきているのを実感している。日常生活の中で「自分が利他的に振る舞うこと」で自分は満たされているかもしれない、ということだ。

 

 自分のグループがいい感じになったら自分も嬉しいし、気持ち良い。それ自体だけでなく、自分が役に立っているその事実が楽しい。最近感じつつある感情とこの本の論旨がつながることで、承認欲求と所属欲求のレベルという言葉が自分の今いる位置を教えてくれた。

 

 心理療法を続けること、適度な欲求不満を味わい続けること。その結果、二つの欲求のレベルがあがり、取り扱いがうまくなることで自分が住む世界の居心地が変わるんだ!その先には、私も誰かを満たすことができるのかもしれない。

 

 最後にぼくが好きなところを引用しておしまいにする。イラストの展開と構成も素敵だったな。いい一冊でした。

 

 たくさんの人が、「認められたい」を充たし合える未来に変わっていく第一歩として、まず、あなた自身が「認められたい」をレベルアップさせていって、周りにいる人達と認め合えるような関係を築いていって欲しいと思います。そうやっていけば、あなたの周りにいる人達も「認められたい」のレベルアップを成し遂げやすくなるでしょう。そうやって、ひとりひとりのレベルアップが連鎖していけば、「認められたい」 を巡る今の息苦しい光景も、少しずつ良くなっていくのではないでしょうか。

 筆者としては、本書がそんな「認め合える」社会に向けて、少しでも役立つことを祈ります。p.187

 

 

 

認められたい

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