The long waiting

If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.

あなたの悲しみは突き抜けるとだれかの人生を豊かにできるのかもしれない。

 あるとき、他人が人生に悩んでいることを知りたくなった。短期間で500人分は人生相談を読んだと思う。ある相談に感銘を受け、いろんな人生相談を貪るように読んだ。そうしてぼくは人生相談が好きになった。

 

 実に多くの人が悩みを(匿名とはいえ)披露していた。その当時、ぼくは自分の悩みをうまく他人に伝えられることができずに悶々としていた。赤裸々に悩みを吐き出している人がいるという事実からぼくも悩んで誰かに相談していいんだと勇気をもらえた。

 

 たくさんの相談者の悩みに触れ多くの相談に感情移入しながら、自分の悩みも世間によくある凡庸な悩みの一つなのだと思えたことはうれしかった。その相談内容が類型化出来ることに気がついて、悩みが似たり寄ったりであることにほっとした気がする。

 

 

 人生相談は相談者が悩みを披露して始まり、回答者がそれに応えて完結する。さらに相談を読み進めると、途中から別の視点から人生相談を読んでいる自分に気がついた。相談者ではなく回答者の資質だ。親族が新興宗教教祖をしていた元アニメ製作会社社長、生まれつき頭蓋骨のなかに膿がたまる病気の作家、日本で最も著名なフェミニスト等など。

 

 ぼくは、おそらく自分の存在を損ないかねないほど激しく傷ついて生きてきたであろう回答者からの返事が好きになった。編集の都合だろう、端的にまとめられた一般的で凡庸な相談文から相談者の個別の事情や感情を受け止める。相談者の味方としてどこまでも具体的で同じ痛みを想像しながら答えているんじゃないかと思えたのはそんな人たちだったと思う。

 

 ある相談での回答者はテレビで盛んにスピリチュアルな話をする元ゲイボーイだった。奇抜さのないけれども温もりのある回答から、「回答者は自分の悲しみを思い出しながら、今相談者が感じている悲しみにまで降りていける。」と感じた。痛みに寄り添うとは自分の痛みの思い出を経由して他人の痛みを想像することではないかと。そのとき、オーラの泉は湧いていなかった。

 

 今は悲しみの縁にいる相談者も、その人生における痛みから目を背けず、咀嚼し消化しきれた時、他人の悲しみを受け止めて同じ言葉で共感できるようになるのではないだろうか。人生相談の回答者は、悩みに対して同じ目線から指針や人生の補助線を示すだけではなくて、相談者のように傷ついた人がどのように他人のために語り癒やすことができるようになるのかということを身を持って示しているのだと思う。その振る舞いは相談者のもう一つの未来の可能性だ。

 

 そういうわけで僕は人生相談が好きです。 

 

 

悩み相談で解き明かす「人生って何?」 生きる

悩み相談で解き明かす「人生って何?」 生きる

 

 自分を肯定しきれない人間が語る自分の姿とそんな人間のための言葉を自身の今だせる言葉で紡ぎだす。著者は自分を肯定できないあなたと同じ地面に立って語りかける。特に女性向け。

 

 

楽に生きるための人生相談

楽に生きるための人生相談

 

 スピリチュアル要素は完全に除いた人生相談。傷ついたことのある人間が傷ついている人間に語りかけるまっとうさと救いの広がりを示してくれる。

 

 

 

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

 

 一番感銘を受けた人生相談が乗っている。でも実はこれ、人生相談の方法論みたいな本で実にこの人らしい本だなって思う。