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The long waiting

If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.

『心理学の名著30』,09トマセロ『コミュニケーションの起源を探る』(二〇〇八)―人は協力するために他人を理解する

 人間のコミュニケーションは協力志向だ、ということを説く本。ぼくはこの手のコミュニケーションが苦手で、どうしても自分自分という方向に気持ちを持って行ってしまう。小さい頃からそうなんだけれども、確かにトマセロの言う共有がいかに大きな意味を持つのかということをつい最近になってやっとわかってきた。

 

  

1.研究の大枠

トマセロの三つの仮説

 (1)協力に基づくコミュニケーションは、まず身振りの領域で進化した。つまり、個体発生の過程で生じる自然で自発的な指差しと物まねを通して発生し進化した。

 (2)協力に基づくコミュニケーションの進化を助けたのは、「共有指向性」の心理基盤である。心理基盤とは、協調活動のコンテキスト(文脈)における共有を思考する動機とそれを可能にするスキルである。

 (3)音声や記号による言語コミュニケーションが存在しうるようになったのは、協調活動がヒトにとって本質的であることに加え、ヒトにとって自然に理解できる身振りが存在すること、複数のヒトが共有を思考する心理基盤を持つこと、慣習や構文を作り伝えるための模倣や文化学習のスキルが存在したこと、による。p.86「「異なる視点」は人しかもたない」

  「協調活動」、「協力に基づくコミュニケーション」か彼の研究のキーワードだ。「協力に基づくコミュニケーション」はある人が意図を持った人物であることを理解して、他人の意図を推察することとできること、そして他者に見返りなしに助けや情報を提供することによってこそ可能になる。見方や感情の共有はがコミュニケーションの基盤であることの意味はここにある。 

 2.重要な概念

①九ヶ月革命

 その後、彼は九ヶ月革命を提唱した。つまり、ヒトは生後およそ九ヶ月前後に、子どもは言葉を習得するための土台を築くというのである。そして、他者(自分の周りにいるオトナであることが多い)が意図を持っている存在だと理解するようになる。具体的には指さしの指され方を見ることができるようになる。見て欲しいという相手の意図を読めるようになるのである。p.80「人は九ヶ月から社会の一員となる」

 重要な人の勘定や味方の共有を捉えられるようになるのが、この時期であれば、人が文化・社会的一員としての人へと変化する時期なのかもしれない。関係構築、つまり社会関係の始まりといういみで、トマセロ九ヶ月革命と読んだ。

 

3.学説史上の位置づけ

①共有、要求、伝達

コミュニケーションには、「(事実の)伝達」と「要求」があるというのが従来の考え方の主流だった。スキナー(3)は行動主義の立場から、言語は要求言語行動(Mand)と報告言語行動(Tact)に分類できるとしたが、それは従来型の考え方の一例である。それに対してトマセロは、(感情や見方の)共有が、要求、伝達に加えた人間のコミュニケーションの基盤だという理論的枠組を提示し、ヒトを含む動物の行動を研究してきた。p.80「人は九ヶ月から社会の一員となる」

  ここでは行動主義の立場とのコミュニケーションの差異を示しているが、「子どもの心理学の歴史」という小見出しで一八七〇年代からトマセロの研究までをざっくり示してくれている箇所もあるので、これは別にまとめてみようと思う。

 

コミュニケーションの起源を探る (ジャン・ニコ講義セレクション 7)

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